血糖測定の痛み

内科のベッドに移されるとすぐに食事が出されるようになりましたが、何度も嘔吐を続けたことで喉が痛み、飲み込むことが苦痛でなりませんでした。

おかゆにしてもらってもしばらくは痛みが続き、先生に訴えても「様子を見ましょう」の一言。楽しみだった食事が苦痛な試練としか思えませんでした。

 

それでも何日かすると喉の痛みもひき、食事が可能となり、また、ひとりで歩けるようにもなりました。

 

糖尿病内科のフロアは明らかに年齢層が高く、わりと若い方の私は手がかからないようで、自分でできるなら自分で血糖測定をしてください、と言わんばかりに、早々に測定方法を学びに行かされました。

 

看護師は毎日、日勤夜勤と担当者が変わり、そのせいか伝達事項がうまく伝わっておらず、ひとりで歩くことが許可されたにも関わらず血糖測定を学ぶフロアまで車椅子で行くように、とのこと。

 

しかも、車椅子を持ってきてくれたのは看護師ではなく、いつも病室を清掃してくれている年配のおばさま。少し足だか腰を悪くされているように見えたのですが、まさかあなたが私を運んでくださるのですか…

 

おばあちゃんと孫、にも見えなくはないツーショットで、明らかに逆だよなあと思いつつおばさまに運んでもらうと、通されたのはブースに区切られているちょっとした部屋。

そこにまた別の先生がおり、では早速、と測定に必要な器具を並べ始めました。

 

ふたつの測定器を出され、「どっちの測定器がいい?」と言われ、見た目にも可愛いまるっこいやつに手を伸ばそうとしたものの、「何が違うんですか」と問うと、まるっこいやつを指して「メーカーが違うだけで基本的に同じだけど、これはもうすぐうちの病院で使わなくなるかもしれないなあ」

選ぶ余地ないじゃないか。

 

30分程度で測定方法を教えてもらい、測定器一式を抱えて、またおばさまにベッドまで運んでいただきました。

 

測定器一式もらったはいいものの、やはり自分で測定するのは怖い。指先に針で血を出すなんて、どれだけドMなんだと思いながら、次の測定からやって見せる。

 

1型糖尿病は若くして発病する人が少なくありません。小学生や、それよりも早く発病することもあります。

そんな若くして、これからずっと血糖測定とインスリン注射をしていかなくてはならないなんて、本人もつらいし、それを見る親御さんも気の毒に思ってしまいます。

そしてなんといっても痛い。何歳でもこの痛みは変わりません。

そしてめんどくさい。そのため、血糖測定をサボる人もいなくはないようです。

 

私は、この血糖測定とインスリン注射を一生行わなくてはならないと言われたとき「分かりました」とすんなり受け入れました。自分でも不思議なほど、素直だと思います。「痛いのやだなー」程度で、泣くことも怒ることもありませんでした。

 

私は入院が決まったときも「仕事を休める」と思ってほっとしました。

もちろんつらい症状で運ばれましたが、ひとりでゆっくり休める時間は何よりもうれしく思いました。もっとストレスかかえて働いている方々は多くいると思いますが、短気な私は日々のストレスが積もっていたのかもしれません。

 

そして運ばれたときの苦しさや、食事がとれないほど嘔吐を続けたことに比べれば、細い針で一瞬刺すことの方がよっぽどラクに思えました。

 

今では医療も発達し、血糖値をグラフ化して見ることができ、何より痛みの少ない測定器もあります。

 

また、1型の場合はそこまで厳しい食事制限があるわけでもありません。

もちろん、高・低血糖や合併症のリスクがあったりと不安な点はあります。

しかし、それを極力回避する方法は先生から教わることができ、その通りに行動すれば、普段の生活に支障はありません。

 

そう考えたら、数ある病気の中でもわりと融通のきく病気なのではないでしょうか。

 

そこそこ大きな病気、だけれど融通のきく病気。
私はむしろ、1型糖尿病でよかったかも、そう思うこの頃です。

 

KUTANECO

KUTANECO

30歳で1型糖尿病が発病。

これまでの日常に、1型糖尿病というスパイスを加えた毎日を綴ることで、私自身の記録に、また同じ環境の皆さまの参考になればと思います。

その他、趣味に関する内容も随時更新します。

また、インスタグラムにて1型糖尿病での生活をコミック風に共有しているので、併せてご覧ください(↓下のアイコンをクリック)

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