1型糖尿病者による、初診への期待

1型糖尿病の宣告を受け、余儀なく入院の手配が進められている頃、私は糖尿病内科の先生から血糖値について説明を受けていました。

「通常、血糖値は70~140が正常だけど、あなたはいま450近くあります」

やばいじゃん。

「500超えると昏睡してしまう可能性もありますよ」

やばいじゃん。

どうやらギリギリのところで私は救われたらしい。
自分が本当にまずい状況にあることをこの時初めて理解しました。

点滴をしてもすぐには状態は良くならないようで、高血糖による喉の渇きが収まらず、しかし飲むとすぐトイレに行きたくなる。

また、飲んだ刺激で嘔吐にも見舞われ、それが繰り返し続きます。

朝から6回も嘔吐すれば喉も痛くなります。
何度も上げるものだから、看護師さんに飲む量を最低限にするよう言われました。でも喉渇くし…と、ちびちび日本酒をたしなむように水分を補給します。

そうこうしていると、病室まで移動することに。
起き上がる気力は無く、担架でそのまま運ばれます。

普通の病室をイメージしていたら、なんとICUの、しかも個室に向かっていきました。急な入院だったため、病院側の事情か私の病状のせいかは分かりませんが、個室という快適な空間が与えられました。

「通常の病室ではテレビは有料ですが、ここは無料で見放題ですよ」
やったー。と思いつつ、その時点での私はもちろん、意識はあるものの無気力。
部屋に通された段階ではテレビを見る元気はありません。

トイレに行きたくても自分ひとりでは行けず、看護師さんに車椅子を押してもらいます。ひとりでできないことのもどかしさを感じます。

お昼頃には喋る体力も出てきたので、勤務先と、結婚式の担当プランナーへ連絡をいれます。週末にばっちり打ち合わせを入れていたのです。

一通りの連絡を終え、一安心した頃、夜通し眠れなかったことを思い出すかのように眠気が襲いかかり、夕方には夫に荷物を持ってきてもらい、あっという間に就寝の時間。
食事をとることは無く、3時間ごとに血糖値を測るため、夜中も問答無用で起こされながら、夜の病院を過ごしました。

朝、先生から、内科のベッドに移動する旨の説明を受けました。
ICUにいるということは、それなりに重病ということなので、通常の部屋に通されることは良くなっている証だということは分かるのですが、個室という自分ひとりの空間でなくなることが残念でなりません(お金で解決する話ですが、ケチな私はそういう発想はありません)。

移動までのわずかな時間、これまでのことを振り返ります。

自分がもっと早く病院に行っていたら
初診で救急外来の先生が血液検査をしてくれていれば

たらればを言っても仕方ない。
病院に行くタイミングを決めたのは私
初診で糖尿病内科の先生がいなかったのは運の悪さ

でも、1型糖尿病の劇症型は早期発見が重要であることが、参考書にも書かれています。
私の症状は劇症型の一般的な症状です。腹痛からの吐き気、嘔吐。
吐き気までいくと胃腸炎に似た症状なので、見極めが大事のようですが。

早くに見つかっていれば、こんなに苦しい思いをすることはなかったのに。

おかしいと思ったらすぐに病院に行くことの重要さ
そして、糖尿病内科の先生だけでなく、救急外来の先生も「劇症1型糖尿病」の
初期症状が浸透すれば

ほかの1型糖尿病者の早期発見に繋がるのでは
同じように苦しい状態で発見されることが少なくなるのでは、と思うのです。

テレビを見ながら、残り短い個室の時間をかみしめるのでした。

KUTANECO

KUTANECO

30歳で1型糖尿病が発病。

これまでの日常に、1型糖尿病というスパイスを加えた毎日を綴ることで、私自身の記録に、また同じ環境の皆さまの参考になればと思います。

その他、趣味に関する内容も随時更新します。

また、インスタグラムにて1型糖尿病での生活をコミック風に共有しているので、併せてご覧ください(↓下のアイコンをクリック)

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